今回は、不動産を2名以上で購入する場合の所有権の共有割合(共有割合の事を「持分」といいます。以下、共有割合を「持分」と記述します。)の決め方について書いていこうと思います。
最初に、
持分の決め方は、共有者全員の合意があればどんな割合にしても構わないんです。
たとえば、不動産売買代金5,000万円の物件をAさんとBさんの2名で購入し、
その購入代金の出資割合が以下のように
Bさんは、2,000万円出資
だった場合でも、
2人の合意があれば、持分を各2分の1にしても構わないんです。
でも、この持分の決め方って何か問題がありそうな気がしません?
(^^)
そうなんです。この持分の決め方、後日、問題が発生する可能性 大 なんです。
(^_^;)
それでは、
「後日、問題が発生しないための持分の決め方」について、書いていきますよーーー。
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ご参考になれば幸いです。(^^)
②不動産持分を適当に決めた場合の問題点は?
③不動産持分の具体的な決め方を知りたい。
④ 親子リレーローン(連帯債務)で不動産持分を決める際に注意すべきことは?
⑤ 登記した不動産持分を更正する方法はあるの?
不動産持分の決め方の基本は出資割合で!
ここでは不動産持分を決める際の基本的な考え方を記述致します。
タイトルにも書いてありますが、
不動産を2名以上で取得する場合に持分(共有割合)を決める場合、
「出資割合で決める!」
が 不動産持分を決める際の基本的な考え方です。
但し、必ず、出資割合で決めなくてはならないというルールはありません。
が、・・・。
不動産持分を出資割合で決めないと、冒頭で記述したように後日、問題が発生する可能性「大」なんです。
(^_^;)
その主な理由は、以下の2つです。
贈与税が課税される可能性があるからです。
住宅ローン控除で「損」をしてしまう可能性があるからです。
※本記事では「住宅借入金等特別控除」のことを簡略し、以下「住宅ローン控除」と記述します。
それではまず、 不動産持分を計算する基となる「不動産購入代金」について以下のように定義した上で、上記2つの問題点について記述していきますね。
不動産売買代金(建物建築の請負代金を含む)に、不動産購入の為に支払った諸費用やリフォーム代金を加えたもの。
更に、詳しく知りたい方は、「 不動産持分 諸費用 」などで検索頂くと、不動産会社さん等が詳しく解説しているサイトがございますのでそちらをご参照下さいね。
(^_^;)
【固定資産の取得価格に 含める事が出来る諸費用】
①不動産業者さんへ支払う不動産仲介手数料
②不動産売買契約書(建物建築の請負契約書含む)へ貼付する収入印紙代
③住宅ローンの保証料や保証事務手数料
④売主さんへ支払う固定資産税・都市計画税の精算金
⑤司法書士さんへ支払う登記手数料と登録免許税額
⑥不動産購入後に支払う不動産取得税額
贈与税が課税される可能性があるからです。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
贈与税とは、
無償で財産を受けた際、財産を無償で受け取った方に課税される税金です。
では、不動産持分を決める際に、どこで贈与税が課税される可能性があるのか?
次に簡単な事例で紹介しますね。
不動産購入代金 5,000万円の物件をAさんとBさんの2名で購入し、その購入代金の出資額が以下の場合に、不動産持分を各1/2とした場合。
(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金3,000万円
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金2,000万円
(Aさんの計算上の出資額)
2,500万円(50%)
(Bさんの計算上の出資額)
2,500万円(50%)
上記のように AさんとBさんの 持分を各1/2とすると、持分での計算上Bさんは実際の出資額より500万円分多く出資して不動産を取得したことになります。
そうなのです。
Bさんは持分での計算上、実際の出資額より500万円分多く出資して不動産を取得したことになり、この計算上多く取得した500万円分に対して贈与税が課税される可能性があるのです。
モチロン、贈与税が課税されても不動産持分を各1/2にしたいという場合は、出資割合を考慮しないで持分を決めても良いのですが・・・。
出来るだけ余分な支出は避けたいですよね。
(^^)
住宅ローン控除で「損」をしてしまう可能性があるからです。
不動産購入代金5,000万円の不動産をAさんとBさんの2名で購入し、その購入代金の出資額が以下の場合に、不動産持分を各1/2とした場合。
(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン額2,800万円
※住宅ローン年末残高 2,700万円
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金2,000万円
(Aさんの計算上の出資額)
2,500万円(50%)
(Bさんの計算上の出資額)
2,500万円(50%)
簡単ですが、以下①②で算出した控除額を 所得税額より控除(税額控除といいます)することになります。
①不動産の「取得対価の額」に持分を乗じて算出した額と年末の住宅ローン残高額を比較し、額の小さい方を 被乗数(かけられる数) とします。
② 被乗数(かけられる数)に1%を乗じて控除額を算出します。
(住宅ローン控除額の計算例)
① 不動産の「取得対価の額」に持分を乗じた価格 2,500万円と年末の住宅ローン残高額 2,700万円を比較する。
②額の小さな 2,500万円を被乗数とし1% を乗じて控除額を算出。
2,500万円 ✕ 1%
= 25万円(控除額)
※ 不動産の「取得対価の額」とは、
原則、 不動産売買代金(建物建築の請負代金を含む)の事を指し、 諸費用やリフォーム代金を加えた不動産購入代金とは違います。
そうなのです。
上記事例のとおりAさんは実際の出資額の割合で持分を決めていれば、年末の住宅ローン残高額2,700万円に 1%を掛け27万円の控除が受けられるところ、持分を 1/2としたことで控除額が2万円ほど低い25万円となってしまうのです。
また、 Bさんも前掲の通り 実際の出資額より持分での計算上500万円分多く出資して不動産を取得したことになり、この計算上多く取得した500万円分に対して贈与税が課税される可能性があるのです。
どうでしょう。
出資割合を考慮して持分を決めないと 贈与税 や 住宅ローン控除 など税金面で思ってもみない影響が出たり・・・。
大変ですよね。(^_^;)
なので、 不動産を2名以上で取得する場合の持分(共有割合)の決め方については、出資割合で決めた方がお得です。
モチロン、強制ではありませんからね。(^_^;)
実際に不動産持分を計算してみましょう。
ここでは簡易な事例を挙げて、不動産持分を計算してみました。
不動産持分を検討する際のご参考になれば嬉しいです。
(^^)
【事例1】自己資金・親からの贈与・住宅ローン(単独債務)で購入
【事例1】では、自己資金・親からの贈与・住宅ローン(単独債務)を不動産購入代金に充てた場合、その出資割合で 不動産持分を決めた事例です。
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【 不動産購入代金5,000万円の実際の出資額内訳 】
(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン額2,800万円
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金1,500万円
親からの贈与額 500万円
※不動産購入資金の贈与税非課税枠内
【 出資割合により決めた不動産持分】
Aさんの持分6/10
Bさんの持分4/10
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※所有権の登記をする際の持分は整数で登記されますので、出資割合で小数が出る場合には整数に引き直して下さいね。
※出資割合で小数が出た場合に四捨五入等で整数に引き直した場合は、以下の2点に気をつけて引き直して下さい。
【計算例】
以下のような整数への引き直しであれば、上記①②の問題も発生しません。
【 不動産購入代金5,000万円 の実際の出資額内訳】
(Aさんの出資額内訳)
2,765万円(55.3%出資)
内訳 自己資金65万円
住宅ローン額2,700万円
※住宅ローン年末残高 2,600万円
(Bさんの出資額内訳)
2,235万円(44.7%出資)
内訳 自己資金 2,235 万円
【整数に引き直した不動産持分】
Aさんの持分55/100
Bさんの持分45/100
【上記の持分とした場合の持分での計算上の出資額】
(Aさんの計算上の出資額)
2,750万円(55%)
(Bさんの計算上の出資額)
2,250万円(45%)
【結果】
Aさんの計算上の出資額は、2,750万円となり住宅ローン年末残高2,600万円を基に住宅ローン控除額を計算出来る。
Bさんの計算上の出資額は、2,250万円となり実際の出資額2,235万円との差額は15万円であり、贈与税の年間非課税枠の110万円の範囲内のため贈与税は課税されない。
【事例2】自己資金・住宅ローン(ペアローン)で購入
【事例2】では、自己資金・住宅ローン(ペアローン)を不動産購入代金に充てた場合にその出資割合で不動産持分を決めた事例です。
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【不動産購入代金5,000万円の実際の出資額内訳】
(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン額2,800万円
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金500万円
住宅ローン額 1,500万円
【 出資割合により決めた不動産持分】
Aさんの持分6/10
Bさんの持分4/10
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【事例3】自己資金・住宅ローン(連帯債務)で購入
事例3 では、自己資金・住宅ローン(連帯債務)を不動産購入代金に充てた場合にその出資割合で 不動産持分を決めた事例です。
事例3では①②の2パターンを事例としてお載せしてますが、ここで気をつけて頂きたいのは②の事例で、最終的な「不動産持分の割合」と「連帯債務の負担割合」が不一致となる場合です。
②の事例の場合には、以下の 国税庁・質疑応答事例の回答のように「連帯債務の負担割合」で計算した債務負担額と「不動産持分の割合」で計算した債務負担額との年間差額に贈与税が課税される場合がありますので、年間の差額が贈与税の年間非課税枠110万円を超えるような場合には後記記載の検討事項をご検討下さい。
また併せて、ご参考までに②の事例の場合の「住宅ローン控除申告時の控除額計算書記載例」を以下にお載せしますのでご参考にして頂ければ嬉しいです。
尚、②の事例の場合にはお借入契約の前に管轄税務署さんにご確認の上最終的な「不動産持分の割合」を決めて下さいね。
(^^)/
【共有の家屋を連帯債務により取得した場合の借入金の額の計算】
※ 国税庁・質疑応答事例へのリンクです。
※お借入契約の際に連帯債務の負担割合について契約上決まっている場合には、契約に従った割合でのご負担になります。
また、連帯債務の負担割合を決めるに当たって年間収入額を超える負担割合とした場合には、超えた部分に対し贈与税が課税される可能性がありますのでご注意願います。
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【不動産購入代金5,000万円の実際の出資額内訳】
①自己資金出資割合で住宅ローン 4,500万円(連帯債務)を負担した場合
Aさんの自己資金出額300万円
Bさんの自己資金出額200万円
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(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金300万円
住宅ローン負担額2,700万円(60%負担)
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン負担額 1,800万円(40%負担)
【最終的な不動産持分】
Aさんの持分6/10
Bさんの持分4/10
年間返済額が年収を上回り贈与税の年間非課税枠110万円を超えてしまう場合
(検討事項)
・年間返済額が年収を下回るように自己資金出資額割合の調整を検討する。
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②年間収入割合で住宅ローン 4,500万円(連帯債務)を負担した場合
Aさんの年間収入500万円
Bさんの年間収入300万円
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(Aさんの出資額内訳)
31,125千円 (62.25% 出資)
内訳 自己資金300万円
住宅ローン負担額28,125千円 (62.5%負担)
(Bさんの出資額内訳)
18,875千 円(37.75% 出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン負担額 16,875千 円(37.5%負担)
【最終的な不動産持分】
Aさんの持分6225/10000
Bさんの持分3775/10000
「連帯債務の負担割合」で計算した年間債務負担額と「不動産持分の割合」で計算した年間債務負担額との年間の差額が贈与税の年間非課税枠110万円を超える場合
(検討事項)
・「不動産持分の割合」と「連帯債務の負担割合」が一致するように連帯債務の負担割合を調整する。
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【事例4】 自己資金・住宅ローン( 親子リレーローンでの連帯債務)で購入
事例4 では、自己資金・住宅ローン(親子リレーローンでの連帯債務)を不動産購入代金に充てた場合にその出資割合で不動産持分を決めた事例です。
親子リレーローンでの連帯債務で不動産持分を決める際に気をつける点は、 最終的な「不動産持分の割合」と「連帯債務の負担割合」を一致させる点です。
この点が不一致の場合、後に債務の返済を負担する債務者が、住宅ローン控除を受けることが出来ない場合もありますので、親子リレーローンでのお借入を検討する際は、事前に管轄税務署さんとお借入先金融機関にご確認下さい。
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【不動産購入代金5,000万円 の実際の出資額内訳】
①自己資金出資割合 で住宅ローン4,500万円(連帯債務)を負担した場合
Aさんの自己資金出額300万円
Bさんの自己資金出額200万円
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(Aさんの出資額内訳)
3,000万円(60%出資)
内訳 自己資金300万円
住宅ローン負担額2,700万円 (60%負担)
(Bさんの出資額内訳)
2,000万円(40%出資)
内訳 自己資金200万円
住宅ローン負担額 1,800万円 (40%負担)
【最終的な不動産持分】
Aさんの持分6/10
Bさんの持分4/10
最終的な「不動産持分の割合」と「連帯債務の負担割合」が不一致の場合
(検討事項)
・「不動産持分の割合」と「連帯債務の負担割合」が一致するように自己資金出資額割合の調整を検討する。
※親子リレーローンでのお借入を検討されている場合、相続税対策にお借入を検討されている方もいらっしゃると思いますので、自己資金を調整する場合にお子さんへの贈与(不動産購入資金の非課税枠内での贈与)で自己資金の調整を行う事もご検討されてはいかがでしょうか。
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