相続│相続財産を放棄する4つの方法

暮らしと法律

はじめに

 

この記事では、裁判所での相続放棄手続き等、相続財産を受けない手続きを紹介したいと思います。

裁判所以外で相続財産を受けない手続きを行う場合は、プラスの財産のみを受けない手続きとなり、マイナス(負債)の財産は引き受けることになりますので、マイナス(負債)の財産が多い場合には、気をつけて手続きの選択をしてくださいね。


 





裁判所で相続放棄手続きをする

裁判所での相続放棄手続きは、相続を受けない手続きで一番最初に思いつく手続きかと思います。
この手続きが裁判所で受理されると、以下の3つの効果が得られ、相続財産(負債を含む)を放棄することができます。

①相続人としての地位を失う。
②相続財産(負債を含む)を受ける権利を失う。
③相続人でなくなるので代襲相続が発生しない。

注意!!相続人がいなくなった場合

相続放棄をして相続人がいなくなった場合には、最後に相続放棄をした相続人に、相続財産の管理義務が発生する場合があります。
相続財産に空き家等の不動産があり、その空き家が倒壊し他人に損害を与えた場合には、管理義務を負っている相続人が損害賠償請求を受ける可能性もあります。
これを回避するには、相続財産管理人を裁判所で選任し、相続財産の管理義務を引き渡すことで回避できます。
尚、相続財産管理人の選任に当たっては、財産にもよりますが、相続財産管理人に支払う報酬として、予納金を納める場合があります。

民法改正で管理義務要件が緩和?

今まで明確でなかった管理義務で発生する責任のルールが、
「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」と条文上明確になり、相続財産を占有していなければ管理義務が発生せず相続人の負担が軽減されることになりました。

※改正後の民法940条の適用開始時期(施行時期)は、2023年(令和5年)4月1日です。参考までに以下に条文を載せておきます。

■改正後の民法940条
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

■改正前の民法940条
(相続の放棄をした者による管理)
第940条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項及び第二項並びに第九百十八条第二項及び第三項の規定は、前項の場合について準用する。



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遺産分割協議で相続分を受け取らない

裁判所以外での相続放棄手続きで、相続財産を受けとらない方法として一般的なものは遺産分割協議に参加し相続財産を受けとらない方法です。
この方法で以下の3つの効果が得られ、プラスの相続財産を放棄することができます。

①相続人としての地位は維持される。
②プラスの相続財産を受ける権利を失う。
③マイナスの相続財産(負債)を引き受けない合意は相続人間では有効。

※マイナスの財産(負債)を引き受けたくない場合には、債権者の承諾を得る必要があります。



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相続分の「放棄」で相続人全員に相続分を渡す

相続分の放棄も遺産分割協議と同様に裁判所以外での相続放棄手続きです。
この方法は遺産分割協議の「前」に行うことで以下の5つの効果が得られ、プラスの相続財産を放棄することができます。

①相続人としての地位は維持される。
②相続分の放棄で遺産分割協議への参加が不要。
③プラスの相続財産を受ける権利を失う。
④相続分の放棄は単独で行うため、マイナスの相続財産(負債)は引き受けることになる。
⑤放棄した相続分は、他の相続人が相続分割合に応じて取得する。

※マイナスの財産(負債)を引き受けたくない場合には、債権者の承諾を得る必要があります。



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相続分の「譲渡」で相続人等に相続分を渡す

相続分の譲渡は、相続分の放棄と同様に裁判所以外での相続放棄手続きです。
相続分の譲渡と相続分の放棄の手続きの違いは、相続分の譲渡は単独では行なえず、必ず譲受人という相手方が必要となるところです。
相続分の譲渡は、遺産分割協議の「前」に行うことで以下の4つの効果が得られ、プラスの相続財産を放棄することができます。

①相続人としての地位は維持される。
②相続分の放棄で遺産分割協議への参加が不要。
③プラスの相続財産を受ける権利を失う。
④相続分の譲渡は、譲渡人と譲受人の間で行われるため、譲受人が引き受けたマイナスの相続財産(負債)は、譲渡人と譲受人の間では有効。

※マイナスの財産(負債)を引き受けたくない場合には、債権者の承諾を得る必要があります。

相続分の譲渡で可能な事

以下の3つが可能です。
①譲受人は相続人以外の第三者も可能。
②譲渡は「有償」「無償」どちらも可能。
③他の相続人は譲渡分を取り戻す事が可能。

(相続分の取戻権)
第905条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

注意!!
相続人以外の第三者へ相続分の譲渡をする場合、「有償」譲渡の場合は譲渡人が相続税と譲渡所得税を負担、「無償」譲渡の場合は譲受人が贈与税を負担する場合がありますので、この方法を選択する場合には税金も考慮して検討下さいね。



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ま と め

相続財産を放棄する4つの方法

①裁判所での相続放棄
②遺産分割協議
③相続分の放棄
④相続分の譲渡

注意!!
上記①の手続きは、プラスとマイナス財産全てを放棄出来ますが、②③④の手続きはプラス財産の放棄は出来ますが、マイナス財産の放棄を債権者に対抗するには、債権者の承諾が必要となります。

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